Japan Environmental Exchange

モーラ・ハーリさんは、J.E.E.の創設期に代表を務め、私達の活動の基礎を作り上げた女性です。彼女は常に自分の置かれた状況の中で、身近にできることを実践しています。現在はインド・カルカッタに住んでいますが、彼女の環境活動が現地の新聞「The Telegraph」に掲載されましたので、日本語に訳したものを掲載します。

(訳: 細木京子)

“The Telegraph”紙より

2016年7月8日発行 インド・カルカッタ
ブリンダ・サーカー

 モーラ・ハーリは、バルコニーでミミズコンポストに取り組んでいる。私達の街には、自治体がごみ分別の義務化を考えるより何年も前から分別している人がいるのだ。
 彼女はヴィディヤサガール・ニケタンに住むアメリカ生まれの環境活動家で、ボース学院の科学者と結婚し、十代の2人の子供の母親でもある。
 オーストラリアのパーマカルチャー(持続可能な農業エコシステムの開発手法)を学び、日本環境保護国際交流会(JEE)で活動した。身近なところでは、カルカッタ国際学校アースクラブの顧問を務めているほか、芸術・教育・環境団体の「マスタード・シーズ」を運営している。
 「ソルトレイクは、新しい政府になってからきれいになり、ごみ分別を考えているので嬉しいです。住民は、ごみ圧縮機に入れるより前の、最初の段階でごみの体積を減らすことができるし、減らすべきです。買物の量を減らし、できる限り何度も使って、最後はリサイクルに出す。生ごみは腐らせて堆肥にすれば土に戻せます」と彼女は言う。
 彼女は地域のごみ分別に関わっているが、決められた通りに出さない場合、ペナルティを課せられることに賛成だ。「日本では、ごみ袋に名前を貼り付けて出すところもあります。分別がされていないとごみ袋が家の前に戻されて、恥ずかしい思いをしてしまうのです」。
 彼女は、ごみの山から使えるものや売れるものを探すピッカーズと呼ばれる人たちを、分別作業に雇うことも提案している。「彼らは熟達した技術をもっています。彼らがいなければ、ごみ処分場の山はもっと高くなっているはずです。行政は、彼らに緑色の制服を与えて分別作業工程のどこかに入れればいいと思います。本格的な実施の前に手応えを確かめたければ、ラボニーのような団地で試行してからやってみるのもいいかもしれません」
 テレグラフ紙ソルトレイク支局は、4Rに関して私達みんなが環境にやさしい暮らしをするためのアイデアを聴くため、モーラの家を訪問した。
「環境にやさしい暮らしをするというのは各自が決めることであって、どれだけの人がやっているかという問題ではありません。もし、あなたがそれをしていれば、他の人も後に続くでしょう」と 彼女は言う。

 <Reduce―リデュース>

 モーラは、自動車に5人以上乗っている時にしかエアコンを使わない。近所の人にも、新たに物を買わずに物を借りるように勧めている。「それが、私が自宅でこども図書室を始めた理由なのです。そしたら、うちの子供の本を他の子供も読めるでしょう」
 インタビューの最中に、近くに住むアシュトシュ・パタックという子供がやって来て、お母さんがココナツ切り機を借りたがっている、と言った時、彼女は私に話してくれた。「アメリカでは今、道具図書館というのが作られはじめ、20世帯が各々20台の芝刈り機を買うのではなくて、皆で1台を共有するというものなのです」
  彼女の一家は、買い物に市場に行くときは必ず布袋を持っていく。「布袋を持ち歩けば、排水管を詰まらせたり、土壌を汚染して最後は海に流れ着くレジ袋を、何千枚も減らせるということです」

<Reuse―リユース>

 家電について言えば、モーラは友達に中古の電話やコンピュータを処分する前に譲ってくれるように頼んでいる。「最近の人はすぐ上の機種に乗り換えますが、古いものもまだ使えるのにね。家にはそういうコンピュータが3台あって、息子がコンピュータを持っていない子供に教えるのに使っています」と彼女は言う。
  ポテトチップスの袋を洗ってラップの代わりに再利用、古新聞は封筒に変身、裏紙を束ねて帳面に。帳面の表紙にはシリアルの箱やジュースのテトラパックを使う。
  彼女が率いる「マスタード・シーズ」は、古いサリーから作った コースターなどの品物を作る女性の自立支援団体だ。彼女らは、裏地やジッパーを牛乳の袋に付けて財布をも作る。
「私達は、この品物をCIMA美術館やサンティニケタンのような場所やアメリカでも販売しています」と彼女は言う。
  モーラは、洗濯機は水を多く使いすぎるから使わない。彼女は服を手洗いし、汚水は床やトイレ洗いに使う。「環境によい洗剤を使えば、汚水を植物に撒くことができますよ」
  彼女の家の手洗い器の排水管は取り外しが可能で、乾季には歯磨きや手洗いに使った水を手洗い器の下部に置いたバケツに貯める。
  近所の家のポンプがあふれるので、近隣6軒の建物の下にバケツを置いて溢れた水を貯めたことがある。後に、それは植物の水やりに使われた。

<Recycle―リサイクル>

 かつて彼女が土を掘っていた時、指に大きな魚の骨が刺さり、数日間手が腫れてうずいたことがあった。「私はなんとか刺さった骨を取ったのですが、ピッカーズの人達にとっては骨や尖った物で怪我をするのは日常のことで、私のごみのせいで彼らを危険にさらしたくはありません。それで彼らのことを思って、私はごみを洗って乾かします。尖っていれば、そのことをラベルに書いて貼り、直接手渡します。そうすれば彼らが物をリサイクルしやすくなります」
  CISアースクラブの顧問として、モーラと生徒達は、ある有名なパン屋が、生分解性でない発砲スチロール容器を使っていることに気づいた。「それで、私達がリサイクル可能な紙皿に変えるよう訴えたところ、店は私たちの要望を聞き入れて、容器を変えてくれました。全ての学校が、生徒たちが社会の中で何かを変えられることを証明し、環境をよくする活動を続けていけるとよいと考えています」

<Rot―腐らせる>

 モーラの台所には「生ごみ」と「食べ物以外・乾燥ごみ」と書かれ た2つのごみ箱がある。米粒やビスケットなどの固形物は、小鳥がついばめるように窓の敷居 に置いておく。鶏の骨は近所の犬にやる。「こういった物は有機物だから「生ごみ」に入られるけれど、ネズミが来るからさけています」とモーラは言う。生ごみは堆肥作りやミミズコンポストのために使われるのだ。
  堆肥を作るため、モーラは、果物や野菜の皮、茶の葉などの有機ごみを入れるボウルを流しの中に置いている。蛇口をひねるたび、その容器に水がかかる。ボウルの中身は「生ごみ」の箱が一杯になった時に移される。
  そのごみ箱は、有機ごみと紙が6:4の割合で入れられている。「古い新聞紙や破ったピザの箱などを入れます。これらはごみの水分を吸収して臭いを防ぎます」と、一杯になったごみ箱を庭に下ろしてモーラは言う。
  庭の隅には、ごみを埋めるために彼女が掘った穴がある。工事で捨てられた瓦礫から拾ってきた丸石でそこを囲ってあるので、雨で流出することはない。埋め立て場は草で覆われている。「表面の草は土の水分を保ち、きつい日差しから守ってくれます」と彼女は言う。「数日後に土を掘り返して、中身を少し混ぜます。ごみは、雨季なら2-3週間で分解し堆肥はできあがっているでしょう」
  この堆肥は土の肥料となり、庭の他の部分の表土として加えられる。「堆肥は土を柔かく健康にして、根をも元気にします。長雨の間は土壌の浸食を防ぎ、水をあふれさせず吸収します」
  彼女は古い植木鉢の中に生ごみバスケットの中身を入れて、ミミズコンポストも作っている。「ちぎった紙と牛糞から見つけたミミズを混ぜておくだけなのです。ミミズの糞は優れた肥料を作るのですよ」とモーラは言う。


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