Japan Environmental Exchange

「日本クジライルカウォッチング協議会(JWDC)設立総会&シンポジウム」に参加して

JEE関東 吉宗千枝


 6月4日に東京の浜松町の竹芝桟橋の近くに最近できた島嶼会館で、日本クジライルカウォッチング協議会(JWDC)設立総会&記念シンポジウムが開かれました。私は、海外から来られた来賓の通訳者として参加しましたので、簡単に報告したいと思います。
 日本クジライルカウォッチング協議会(JWDC)の設立については、日本経済新聞の6月3日の夕刊に割と大きく記事で取り上げられていますので、一部抜粋します。
 「日本沿岸や離島などで近年盛んになっている野生のクジラやイルカを観察するウオッチングツアーの関係者が、初の全国組織「日本クジラ・イルカウォッチング協議会(JWDC)」を設立する。新たにツアーに参入する業者が増えるなか、動物に優しい観察を心がけるルールの周知や、ガイドの養成などで協力し合うのが狙いだ……」
 6月4日の午前中は、JWDCの設立総会でした。このクローズド会議では、全国から集まったホエールウォッチング協議会の発足メンバーたちが今後の運営について討議され、海外からの来賓も参加されました。
 そして、午後からは、一般の参加者も対象にしたオープンのJWDC設立記念シンポジウムが開かれ、50〜60人の聴衆が集まりました。基調講演として、ホエールウォッチングに関する世界的な著名人であり、20冊くらいの本を著されている、エリック・ホイト氏が「ホエールウォッチングの現状と今後の展望〜WWの可能性と前向きな影響を拡大するには〜」というテーマで興味深い発表をパワーポイントを使って行われました。主な内容は、ホエールウォッチングのこれまでの歴史、現状、そして、今後の展望として、WW活動をどのように推進していったらよいかという提案などでした。20世紀の半ばにメキシコのバハカリフォルニアで始まったコククジラのウォッチングは、現在、世界中で毎年、1400万人が参加するビッグビジネスに成長しました。近年、特にアジアでの成長が目めざましく、とりわけ、中国では毎年参加者数が倍増しているそうで、これには驚かされました。ホイト氏の提案として、今後は、そのような海外、特に中国からのツアー客の誘致と、船からのウォッチングだけでなく、陸からクジラやイルカを見られる場所を設置して、老人や小さな子供も含めて楽しめる、ホエール・トレイル(クジラの展望台を随所に設置した歩道)を作って、皆が走ったり、歩いたりしながらクジラを見られる場所を設けることも提案されていました。
 続いて、日本からの講演者は、北海道(羅臼、釧路、室蘭)、東京都(御蔵島、小笠原諸島)、石川県(能登島)、高知県(黒潮)、鹿児島県(奄美大島)、沖縄県(座間味)から、ホエールウォッチング・オペレーター代表者たちがそれぞれの地域の現状など発表されました。 これがまた、非常に興味深い内容で、日本でも地域によってさまざまな個性があり、ウォッチングも地域の多様性があることがわかりました。その後、これらのWWオペレーターの代表者たちが主に聴衆からの質問に答える、という形でパネルディスカッションが行われました。
 今回、聴衆として参加された方の中には和歌山大学観光課の先生と生徒さんたちもおられ、積極的に質問されていました。和歌山県の太地は昔ながらの捕鯨基地であり、今もイルカ漁がおこなわれていることもあり、和歌山県は非常にセンシティブな場所です。それだけに、皆さんの関心も強く、今後は野生鯨類のウォッチングの方向に風向きが変わるのではないか、と思いました。また、日経新聞が大きくとりあげているように、メディアも確実にその方向に向かっているではないか、と感じました。
 この日本クジライルカウォッチング協議会(JWDC)の設立のためにはアメリカの「国際動物福祉基金(IFAW)」という団体が支援されていて、今後も支援を続けていくという意向を示されていました。私個人としては、この動きを大歓迎したいと思います。そして、まだ見ていない日本のクジラやイルカたちに出会う旅をしてみたいな〜と思っているところです。新しく設立されたJWDCのウェブサイトは、まだ出来たばかりですが、見たい鯨類の種類や、行きたい場所、季節などで、最適なサイトを選べるように工夫されており、写真が豊富で、見ているだけでも癒されようなサイトになっていますので、是非のぞいてみてください。
http://jwdc2014.wix.com/jwdc


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