Japan Environmental Exchange

「脱原発世界会議2」の報告と感想

J.E.E.関東 吉宗千枝


 関東では、2012年12月14,15,16日の3日間、東京と郡山で同時開催のピースボート主催、脱原発世界会議イベントが開かれました。東京では15,16日に脱原発世界会議2が開かれ、私は同時通訳者の一人として参加させていただいたので、概略の報告をします。今年の1月14、15日には横浜で第一回のピースボート主催、脱原発世界会議につづいて二度目の参加となりました。
今回は、前回と違って、複数のイベントを複数の会場で同時進行させるというものでした。東京では「さようなら原発世界大集会」、脱原発大行進、市民広場(団体ブースの出展)のほか、脱原発世界会議2が開かれ、郡山では、日本政府と国際原子力機関(IAEA)による「原子力安全福島閣僚会議」に対し、「脱原発を目指す首長会議」が開催されました。
 脱原発世界会議2(東京)は、述べ5,500名が参加し、合計で9つのセッションが開かれ、海外からも25名の講師が参加されました。私は、そのうち2セッションで同時通訳をしました。

 最初のセッションは、“「原発ゼロ」へ、政府と政治がやるべきこと”と題して、経済学者の金子勝氏、脱原発法制定全国ネットワークの河合弘之氏、ドイツ政府環境諮問委員会委員のミランダ・シュラーズ氏が登壇され、グリーンアクション(日本)のアイリーン・スミス氏が司会を務められました。
 この中で私にとって非常に印象的だったのは、ドイツのミランダさんの講演でした。ドイツでは福島の第一原発事故が起こる以前から脱原発の方向に向かっていたそうですが、その風向きが過去に逆戻りしそうな矢先に福島の事故があり、その後、直ちに脱原発をするという国民的決定がなされたそうです。そして、注目すべきことは脱原発をしたあと、自然エネルギーに転換していくことを国策としているのです。現在、ドイツでは電力の約25%を自然エネルギーで賄っているそうですが、2020年までには35~40%を、そして、2050年までには80%を自然エネルギーによって賄うという目標を立てているそうです。すでに今現在、ドイツ各地の村々で電力の100%を自然エネルギーで賄うことを決定しており、全国にもその動きがすごい速さで広まっている、とのことです。そのために自然エネルギーへの投資と転向が、驚異的スピードで進んでいるとのことです。
 そして、自然エネルギーへの投資を行いやすいようするため、FIT(Feed in Tariff =固定価格買取制度)というものを導入しているとのことです。これは自然エネルギーの普及などのため、買取価格を法律で定め、助成する制度で、このFITの導入が極めて重要であることをミランダさんは強調されていました。
 また、ドイツが国を挙げてこのような政策を採っている背景には、ドイツが一国でも自然エネルギーに転向すれば、他のヨーロッパ諸国もドイツの後に続いてくるだろう、という期待があるからだそうです。

 また、ドイツでは最も太陽光発電に投資しているそうですが、主に屋根の上で発電しているそうです。また、風力発電については、海からの強い風を利用するため、沖合にどんどんと風車を建てているそうです。また、ドイツの政策の影にはメルケル首相が女性であることもひとつの要因であることが窺われました。
 このセッションでは最後に会場からのコメントや質問がありました。そのなかで、福島から参加されている方の発言で、「現在、自然エネルギーについてドイツに視察に行く人が増えており、まだまだ行きたい人も大勢いるが、ドイツのどこへ行ったらいいのか、また、どうやって通訳者を見つけたらいいのか、実際的なことが分からないので、ドイツ視察ツアーの斡旋をしてくれる窓口をつくれないだろうか」、というのがありました。これに対して、現実的に難しいところもありますが、将来的にJEEとして協力できないものかなあ、と思ったことでした。

 次に参加した二番目のセッションは、“日常のモヤモヤから政治へ-手をつなぐ女たち-”と題して、各地からやって来た20人近くの女性が数分ずつ発表されるとともに、映像として福島アウシュビッツ平和博物館の館長さんのインタビューや、その博物館で開かれた水俣展の映像、福島の人々へのインタビューなどが上映されました。
 このセッションでは、発表者全員女性で、日常生活の中から女性の視点で多くの発言がなされ、日本では女性のエンパワメント(権利拡張、社会的地位の向上)が必要であることが痛感されました。
 先のセッションから引き続き、ドイツのミランダさんと、アイリーン・スミスさんも参加されました。ミランダさんは、ドイツではメルケル首相が女性であることが脱原発の推進力になっていることを示唆されていました。そして、海外でも脱原発を望んでいるのは女性のほうが多いということでした。アイリーンさんも、アメリカ東部の女性団体による圧力で電力会社が原発を1ドルで売却した例がある、とおっしゃっていました。

 今回の会議では、主にドイツのミランダさんの発言から大いに学ぶことがありました。ドイツが自然エネルギーを猛スピードで推進していること、また、ドイツでは女性のエンパワメントが非常に進んでいることなど、日本のわたし達が学べることや、ヒントになりそうなことが沢山あるように感じました。そして、私もドイツに視察に行くべきだ、と感じましたし、もっと世界に目を向けていくことが大切だと思った次第です。

(終)


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