デモンストレーション
山野弘美(スイス在住)
昨年9月、スイスの首都ベルン行きの車内。時々、目覚まし時計のベルが鳴り響く。
ちゃんと鳴るか試しているのである。というのも、今日は国会議事堂の前で「Wakeup!」
(起きろ!)と名づけられた、目覚まし時計を使ったデモストレーションがあるからだ。私達家族も総出でそれに駆けるところだ。だから、ベルの音を聞くたびに「あ、仲間だ」と嬉しいのである。スイス連邦政府は、2020年には国内で
エネルギー不足になるため、天然ガス発電所の建設や、原子力発電所の改築か新規建設を検討すると発表した。それに足並みを揃えるように、電力会社と現在原発がある私達の村、デニケンの村長が、これに積極的に応じるすばやい反応を、紙面で示した。これに対して私達は、政府に早い話、「ボケんなよ! もっと頭使えよ!」と言いに来たのである。気候変動対策の緊急性を示す科学的根拠は、一層強固かつ確実になってきている現在、連邦政府のこの見解には、本当にうんざりする。世界銀行の元主任エコノミスト、ニコラス・スターン氏は、「今日、省エネ技術と自然エネルギーへ投資する者が、明日の経済のリーダーになる」と言った。経済重視の政策を行いたいのであれば、持続可能なエネルギーに
目を向け、持続可能な経済発展を推進し、新しい安全な雇用を創り出すべきだ。
国会議事堂前に着いた。見たところ、目標の1000人か、それ以上は集まっている。3時半、1000個以上の目覚まし時計の音が一斉に鳴り響いた。家に一個しかない目覚まし時計を、夫のアンドレーアスに渡して、私は子供2人に、空き缶とトンカチ
を渡した。毎日何度も「うるさい!」と言われる子供達は、今日は「うるさくやりなさい!」と言われたものだから、目をギラギラ輝かせて実行にうつしていた。私も空缶とトンカチで力一杯やった。
ベルンでは、しょっちゅう多様多彩な デモが行われている。異議は、まず外に出て、それを
人と共有し、連帯することだ。「連帯」できるかどうかで未来が決まる、と言っても過言ではないだろう。
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