ネパール便り(3)プラムド・ラムサル(在ネパール) 日本語訳:藤本実千代 5.約18.3%の土地が保護管理地区として指定されています。動植物の保護、貧困の改善、生活向上のために保護地区を適正に管理していくことが必要とされています。 6.土壌退廃、生産能力の低下した土地問題が環境問題として深刻です。人口増加と、食料と農地需要の影響が傾斜した土地や森林にまで及んでいます。ひどいモンスーンとなると、地滑りや土砂流出、河川をせきとめたりして、崩れやすい山の斜面の土地や土壌が荒れる被害がおこります。全体の地滑りのうち5%もが、新しく建設された道路やトレールと関係していると見られています。 7.都市では廃棄物が環境問題となっています。主な都市では人口が増加し管理機能不行き届きな開発がされています。そのために廃棄物が増えているのです。廃棄物は主に都市の家庭からでています。人口の14%強が58の自治区に住んでいてその人々が全廃棄物の80%以上をも出しているのです。約三分の一のゴミは有機物です。 8.河川などに廃棄される不当なゴミ、健康を害するものの影響が実質でています。 9.廃棄物処理は自治区の義務ですが、ゴミ処理機能も技術も十分ではありません。ゴミの埋め立て地に関してはとても繊細な問題となっていて人々の関心も一般的にはまだまだです。都市では、ゴミ埋め立て地建設などのインフラ整備も欠けています。 10.ネパールは水資源が豊富です。河川が大小6000以上もあります。人口増加にともない、飲料水、下水道設備、潅漑、工業用水、エネルギー資源用水、リクリエーションも増加、無計画な都市計画もあって、水不足と汚染が深刻な問題となっています。安全な飲料水を確保することが、カトマンズ渓谷では特に問題となっています。 11.都市部での水質悪化は明らかです。下水回収処理、廃棄処理が不十分なためです。現在ある限られた施設も効果的に利用されていなかったり、機能していない状態にあります。特にTarai地区では排水設備に問題があります。排水処理ができる家は少なく、処理されないまま家庭排水が川に流れ込んでいます。ほとんどの家が(掘り込み式の)手洗いはなく、直接川岸、外へ排泄されています。工場排水も直接川に流されています。これらが要因となって、土壌、地下水汚染を引き起こしています。 12.水汚染の影響が健康も害しています。衛生管理が不適切なこともあり、下痢、腸チフス、皮膚病、腸内寄生虫などの病気が起こっています。ネパールではよくある病気です。下痢が原因で年間多くの幼児が亡くなっています。地下水のヒ素汚染が近年Terai地区で問題となっています。 13.汚染が水辺の環境にも影響を及ぼしています。ネパールの川には多種多様の生物が生息していますが、それらも脅かされており、特に都市中心部のカトマンズ渓谷の川では、生物がすでに見られなくなっています。 14.化石燃料使用の増加、工場が集中していたり、車の排気ガスによって起こる大気汚染が深刻です。多くの地域で工場排気ガスが問題で、特にカトマンズ渓谷は地形が盆地(すりばち型)であり、急速な無計画都市開発と、狭い道路に輸送車両が集中していることもあって、大気汚染の被害を受けています。さらに、道路整備、管理が不足していることも、大気汚染を悪化させています。 15.カトマンズ渓谷で最大の公害要因となっているのが、交通によるもの、次いで、家庭、商工業となっています。ガソリンが汚染の大部分を占めますが、薪や石炭も大きな要因です。ブロックの塊(キルン)の技術も進歩してきたので、カトマンズでは、この分野での公害は減るのではと見られています。田舎では換気が不十分なため、室内公害も健康問題として警告されています。 (了) |