Japan Environmental Exchange

ネパール便り(2)

プラムド・ラムサル(在ネパール)


多様な生態系をもつネパール

 ネパールは多種多様な種が共存しており、それは壮大な地形、異なった環境や多様な気候風土によります。
 標高の高低差や、気候の違いが狭い圏内でもあるため、ネパールではたくさんの種の草花や動物を見ることができます。
 動植物も、人も、複雑に絡み合い豊かな生態系を生み出していますが、その反面、動植物が知らず知らずのうちに搾取されすぎていたり、誤った使われ方をして危機に直面しています。
 ネパールは世界的にみても大変狭い地域に数多くの植物の種が生育しています。世界の花をつけない被子植物のうち約3%弱が、花を咲かせる裸子植物では約2%がネパールでみることができます。ネパール固有の植物は主にヒマラヤ山脈地域でみられ、うち、花を咲かせる種は246、花がないものは248種あります。約500種の食べられる植物があり、うち200種は栽培されています。絶滅危惧種は60種、ネパール固有種は47種。ネパール固有種でない60種のうちの22種が希少、12種が絶滅危惧、11種が危急です。
 固有種では、8種が絶滅、1種が絶滅危惧、7種が危急、残る31種は国際自然保護連合(IUCN)が定めるレッドリストとなっています。1000種を超える被子植物がネパールで確認されており、うち93種がネパールで初めて見つかっています。93のnepalensis植物のうち32種がネパール固有種です。ネパールは世界の0.1%強の土地しかありませんが、蝶が多種生息(640種)し、淡水魚2.2%(182種)、両生類1.1%(43種)、爬虫類1.5%(100種)、鳥類8.5%(852種)、哺乳類4.2%(181種)を有します。
 またネパールは多くの動植物を栽培育成しており、400種の園芸作物、約200種の野菜があります。うち約50種は市場や家庭向けに栽培されています。100品種以上の果実が15、200品種の野菜、10品種の芋類が市場向けに栽培されています。野生遺伝子種も地元の人たちの手で経済利益を得るために栽培されています。ネパール農業リサーチカウンシル(NARC)は多種のgermplasmを保有しています。禾穀類、穀類、マメ科植物類、油糧種子類、野菜やスパイスなど、約11,000あり、米類で680、シコクビエが713あります。国は植物17種、哺乳類26種、鳥類9種、爬虫類3種を保護する法律を定めています。ほとんどの動物、20種の植物はすでにワシントン条約(CITES)にも定められています。

環境問題とその解決策の鍵

1.ネパールの自然環境は多種多様であり繊細です。急速な人口増加は自然資源に圧力をかけており、特に水質、土地、森林への負担が問題です。ヒマラヤ山脈地域とTerai地域との間は、穀物栽培、牧畜、住居として森林が伐採されています。モンスーンの時期には、地すべりや地盤沈下、斜面が不安定になったりすることはよくあります。植物が減ったり、水管理がなされていなかったり、工事などで悪化しています。そのためモンスーンの度に、多量の土砂が山の上から流れています。人口増加とともに、無計画な土地、道路開発がすすみ、森林が減少しいます。そして少ない土地を農地のために開発し、都市も不規則に広がっていて廃棄物やいろんな公害で環境の悪化を引き起こしています。カトマンズ渓谷の大気、水質汚染は特に深刻です。工業地域は限られていますが、地域にあらゆる公害問題をまねいています。

2.急激な環境や自然資源破壊がすすみ、貧困層の人々にとっては、最低限必要なものを満たし自活していくことがより困難になってきています。そのため、さらに森林破壊が悪化、水質汚染や土壌生産力も低下しています。そして土壌、大気汚染も悪化させることに繋がっています。このように環境破壊と貧困が絡み合っているので、ネパールにとって貧困対策と開発のためには、資源の持続可能な利用が必要でしょう。

3.過剰開発のため、ネパールの森林は激減しています。1964年に640万ヘクタールあった森林も2000年には390万ヘクタールまで減少しました。1970年代に国土の37%を覆っていた森林は1990年代に29%となりました。エネルギー資源としては、薪を調理や暖房として使っています。これが森林伐採の主な要因ともなっています。木材はインフラ開発にも使用されています。道路、学校、ビル、住居などです。これにより、地すべり、土壌流出、洪水、動植物の減少の原因となっています。

4.ネパールはあらゆる気候も多様なため、動植物も多種多様に豊かです。8つの気候ゾーンがあり、植生も35タイプあります。100種以上の哺乳類、800種の鳥類、600種の蝶、多くの無脊椎動物、5,000種以上の花、約200種のシダ類をみることができます。森林破壊も一つの要因となって、いくつかの種は絶滅の危機に瀕しています。

(つづく)


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