平和をつむぐ女性の死
山野弘美(在 スイス)
JEEでは、1月に「平和をつむぐ1000人の女性」展を開くが、その1000人のうちの一人のアンナ・ポリトコフスカヤさんが、2006年10月7日モスクワで何者かに銃殺された。
彼女の追悼会は世界中で開かれているが、私はスイスでの追悼会に参列させていただいた。
アンナ・ポリトコフスカヤ:ロシア人ジャーナリスト。1980年、国立モスクワ大学ジャーナリズム学科卒業。モスクワの新聞のノーヴァヤ・ガゼータ紙評論員。1999年夏以来、チェチェンに通い、戦地に暮らす市民の声を伝えていた。その活動に対して、国際的な賞を数多く受賞。
2002年、モスクワ劇場占拠事件では、武装グループから仲介役を指名され、交渉にあたった。
2004年の北オセチア・ベスラン学校占拠人質事件では、チェチェン独立派のスポークスマンと連絡をとりつつ、空路北オセチアに向かうが、KGB要員たちの乗り合わせた機内で毒を盛られ、一時重態に。
彼女の死は、これからの世界のジャーナリズムと平和運動が、現在重大な岐路に立っていることを伝えているのではないだろうか?
二冊ある彼女の邦訳のうち、一冊の「プーチニズム」の中で、彼女は、こう言っている。
「どうして私がこれほどプーチンを嫌いになったか?はっきり言おう。それは重罪より性質の悪い単純さ、シニシズム、人種差別、嘘、果てしない戦争、『ノルド・オスト』劇場占領事件で使ったガス、彼の一期目をとおして続いた罪のない人々の虐殺のためだ。なくてもすんだはずの多くの死体のせいだ」。またこの本の表紙にこうも書いてある。「このロシアをつくったのは、プーチンか、社会か、国民か」と。
2006年10月24日に発表された国境なき記者団の世界報道自由ランキング(対象は168の国と地域)における日本の順位は低い。2006年の日本の順位は51位である。これは昨年度より14位、02年度からは25位の落下であり、国境なき記者団はHP内で日本での報道の自由が侵食されつつあることに、強い懸念を示している。その理由として「排他的な記者クラブ」と「勃興しつつあるナショナリズム」を挙げている。特に後者に関しては新聞社や記者への右翼の物理的攻撃を挙げ、順位下落の根拠とした。
彼女がこれほど嫌いになった、ロシアの現状は、日本と無関係だろうか?
この日本をつくっているのは、政治家か、社会か、国民だろうか?
どのような日本を、世界を、あなたは築きたいのですか?
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